野球肩のメカニズム

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このページについて

このページは野球肩でお困りの方に、野球肩についての知識を高めてもらおうと思いまして投球障害の専門家である私が詳細を説明しています。

投球時の肩の痛みでお困りのあなたは「自分の肩はいったいどうなってしまったのだろう・・・」「そもそも野球肩ってどんな状態なんだ?」と心配になっていることと思います。

まずは自分自身の体を理解し、改善に向けての第一歩として少しでも知識を高めていきましょう。このページではいろいろな発見があるはずです。

野球肩(投球障害肩)とは

野球の投球動作で生じる肩の痛みで、肩関節に付着する筋肉や腱、靭帯、また関節を取り囲む関節包の損傷です。

痛むの出る場所は、肩関節の前方・側方・後方に大別されますが、投球が原因で起こる痛み(症状)は肩関節以外の箇所にも及ぶことがあります。

肩関節の全体的な構造

肩関節解剖図

肩関節の骨頭は6つの筋肉で覆われています。
骨頭を覆う多くの部分は腱板と呼ばれ4つの筋肉があります。

  • 棘上筋
  • 棘下筋
  • 小円筋
  • 肩甲下筋

肩甲下筋のみ肩関節の前方を覆っています。

上方には上腕二頭筋腱、下方には上腕三頭筋腱があります。

 

・腱板疎部

棘上筋と肩甲下筋の間は、腱板が存在しないので腱板疎部と呼ばれています。
解剖学的にとても弱い部分なので、上腕二頭筋腱・上関節上腕靭帯・烏口上腕靭帯などが腱板疎部を補強しています。

 

・その他肩関節補強組織

・肩甲下滑液包
・中関節上腕靭帯
・下関節上腕靭帯
・上腕三頭筋長頭腱
・上腕二頭筋腱鞘
・関節唇
・烏口肩峰靭帯
・肩峰下滑液包(SAB)

野球肩の病態分類

●構造障害(解剖学的破綻)

①SLAP病変(上方関節唇損傷)
②腱板関節面断裂
③インターナルインピンジメント(後上方関節唇損傷)
④ベンネット骨棘
⑤腱板疎部損傷(RI lesion)
⑥プーリー損傷(前方不安定性)
⑦肩峰下インピンジメント
⑧烏口下インピンジメント

●機能障害

①胸郭出口症候群
②上腕二頭筋長頭腱炎
③肩峰下滑液包炎
④腱板・肩甲胸郭関節機能不全

野球肩(投球障害肩)選手の評価

問診・病歴

野球歴、ポジション、投球時痛の出現時期におけるエピソード(発症時の投球内容、当時の練習内容、肩関節肢位、投球数など)、痛みの出現する投球相、痛みの部位(前、後、上方)、痛みの性状(引っかかり感、放散痛、鈍痛、脱臼感)、疼痛の推移、現在の投球レベルなどを把握します。

 

投球相(6相)

投球動作は、ワインドアップ期、アーリーコッキング期、レイトコッキング期、アクセラレーション期(加速期)、ディセレレーション期(減速期)、フォロースルー期

投球相

視診と圧痛

患者さんをみる際に、脊椎の側彎、肩甲骨の位置異常、筋委縮(棘下筋・三角筋)、筋肉腫脹(僧帽筋等)、などをチェックする。
また前方挙上および外転挙上時に肩甲上腕リズムの異常の有無を観察する必要があります。圧痛点として烏口突起、腱板疎部、前方関節裂隙、結節間溝、大結節部、小結節部、後方関節裂隙、後方四角腔、肩甲骨内上角などをチェックしていきます。

肩関節可動域チェック

一般的な可動域を投球側と非投球側で比べます。

屈曲・伸展・外転・内転・内旋・外旋・水平屈曲・水平伸展

また外転位での内旋・外旋(2nd内旋・外旋)
90度前方挙上での内旋・外旋(3rd内旋・外旋)

このような可動域をチェックしていきます。

 

※同時に特殊検査も行っていますが、投球肩は複合損傷例が多く、テスト法の陽性率はいまだに議論の余地はあります

野球肩(投球障害肩)の病態

病態

投球障害肩は、腱板、関節唇および関節唇・関節複合体や上腕二頭筋長頭腱、肩鎖関節などに損傷が生じ症状を呈しますが、通常は単一部位ではなく複数部位の損傷が生じています。腱板は擦り傷のような腱板炎の状態から部分断裂までさまざまな程度に損傷されています。部分断裂は肩峰下滑液包側、関節包側、そして腱内断裂に分類されます。肩峰下滑液包側は挙上時の肩峰下アーチのぶつかり合いによる刺激、関節包側は挙上伸展時の関節窩縁とのぶつかり合いによる衝撃で生じ、腱内断裂は肩峰下滑液包側と関節包側とのよじれで生じると考えられています。
関節唇は関節窩縁全周に付着しているが、最上部は上腕二頭筋長頭腱起始部も含んでいて、上方の関節唇は可動性を有するゆるい結合となっています。この部分に亀裂や剥離が生じたものが、SLAP損傷として分類されています。
関節唇・関節包複合体は前方が伸張されて不安定性を生じたり、後方が瘢痕化して伸張性が低下したりします。上腕二頭筋長頭腱は、起始部での関節唇との複合損傷としての断裂や結節間溝部での損傷がみられます。
肩鎖関節は上肢の挙上に伴って回旋や圧迫などの力が加わり軟骨損傷を生じます。

発生に至るメカニズム

コッキングからボールリリースまで0.139秒という非常に短い時間のなかで、静止していたボールが150㎞近いスピードまで力を伝える動きが投球動作であり、この投球の動きの中で、関節に負荷がかかる瞬間が2カ所あると報告されています。
1回目は投球方向側の足が接地し、体幹から上肢まで動きを使ってボールを前に動かしていく瞬間、2回目はボールをリリースした直後に急速に減速する瞬間です。
1回目には44Nm(ニュートンメートル)の外転、87Nmの水平外転、67Nmの内旋方向へのトルクが肩関節に加わり、2回目には1,090N(ニュートン)の圧迫力が加わるとされています。
これだけの力がもし投球時に加わるとするならば、成長期に投球を行っていた選手では、骨の成長にも当然影響が出ると推測されます。
この結果投球動作で肩関節に生じるさまざまな報告のトルクやフォースは成長に伴って起きる体の成長の流れを障害するほどの影響を与える力であると言えます。

発生機転

投球動作を身体動作としてみると、さまざまな身体機能のかかわりをリストアップすることができます。
肩や肩甲骨だけでなく、足から肘・手まで体のあらゆる部位の機能が関与していることがわかっています。
逆を考えると、これらの投球動作にかかわっている機能のいずれかでも機能的な障害があれば、投球動作全体に影響を及ぼし、運動連鎖上の障害や代償機能による局所のオーバーワークが生じることは容易に想像がつきます。
次のような実験結果もあります。
身体各部位の動きを検討するために体表マーカーを装着した被検者に、通常の投球を行わせ、次に股関節の内旋を5度に制限するように包帯固定、その後、捻挫の際に行うテーピングにより足関節を固定し、投球を行わせた。つまり、股関節や足関節の可動域制限を人為的に行い、これら3つの条件下で同一被検者に同じ感覚で投げさせた結果どうなったか…
股関節の内旋制限した状態では、肩の最大のスピードの後で肘の加速が始まっていて、ベクトル方向の差から肩関節に負担が生じる結果となった。
足関節のテーピングでは、肩→肘へとつながる運動連鎖が肘→肩へと逆転していた。この結果は、肩が肘・手の加速に参加できないために、肩・肘に負荷がかかる。さらに、肘の最大スピードの後に手の加速が始まることから、肘関節への負担が生じる可能性が示唆されました。
このことは肩・肘は投球動作という全身の運動連鎖上、ボールを動かすための最後の部位であり、それ以上に動いている部位の機能的な問題点を補う部位でもあるために障害が生じやすいと考えることができる。つまり、肩・肘の障害を訴える選手の治療には、肩・肘に無理をかけている他の部位の運動機能を改善することが大切であるという運動療法が理解しやすい。
さらに、インターナルインピンジメントという現象については、肩関節が外転挙上して伸展しなければ肩甲骨関節窩の後上方部分と上腕骨の腱板付着部の衝突は起こりません。しかし、ボールリリース時の肢位は体幹に対して肩関節は前方挙上位をとっており、インターナルインピンジメントが生じるとは思えない。しかし、肩甲骨の肩峰遠位端と烏口突起に装着した体表マーカーの座標にX線像との補正を加えた肩甲上腕関節角度をみてみると、インターナルインピンジメントの症例では肩関節としては水平伸展になっているこを確認することができ、見かけ上とは全く異なった結果が得られ、病態の発生原因を推察する結果となりました。

状態把握の方法

①病態判断

解剖学的な損傷が機能的な損傷と直結しないことも多いので、病態把握の際には病態発生の機序を考えることが大切です。病態把握は、何がどのように壊れているのかを理学所見および画像から判断することですが、判断を病態把握にとどまらず治療に結び付けるには、組織が損傷することによって関節機能にどのような影響が出るのか、病態としてとらえた組織にどのような力が加わって損傷が起こりえるのかということを考えることが大切です。

 

②症状の原因を探る

選手は投球時、あるいはそれ以外の際に何らかの症状があることで自分の満足いくようなプレイができないために、それを解決してもらおうとして専門機関を訪れます。症状があるということは、関節組織に症状を出すだけの損傷があるはずです。腱板の筋収縮による痛みの誘発、不挙上・回旋の際の上腕骨と肩甲骨の位置関係を変えることで安定性やインピンジメント、あるいは上腕骨頭による上方関節唇への刺激などから症状の原因である病態把握を行う。
他動的な可動域計測以外に、自動抵抗運動では本来みられないような他部位の運動参加や筋活動のアンバランスなどの影響により、意図した運動と異なる動きが出たり、座位・臥位・立位や徒手的な補助で筋力や関節運動に変化がみられる場合には、これらの運動連鎖上の機能的な問題点があると判断できる。また、さまざまな理学所見、特にストレステストは、非生理的な状態を人為的につくることで損傷した組織へより効果的に刺激を加えて症状を誘発するテストであるが、同様な動作はを投球時にしていれば、当然症状を出すはずです。つまりストレステストで症状を誘発することができたら、そのような動きが投球動作のなかで行われているのではないかと考えることが必要です。

 

③肩関節としての運動機能の判断をする

運動機能のスクリーニング(共通検査)は、生理的な関節運動範囲での単方向への自動運動が正確にできるか否かで判断します。
正確に(さまざまな代償運動を伴わずに)単方向の運動ができないようであれば、徒手的に運動を介助してみます。これで痛み(症状)が消失する、あるいは正確な運動ができるようになるのなら、運動療法で徒手的な介助運動に相当する運動機能の向上を図る治療が有効である可能性が高いです。
また、生理的な範囲での動きをしても痛みがなく、非生理的な状態を作ることで痛みが誘発されるようであれば、通常の動きの中でそのような非生理的な状態をつくり、組織へストレスをかけていると判断して、運動機能の解決をまず図ることが大切です。

 

④運動連鎖から肩の障害を考える

投球フォームは身体各部の機能が連鎖してきて全身の動き(フォーム)となるので、フォームの乱れは機能判断するための重要な情報となります。投球障害肩で統計をとった90%に何らかのフォーム上の問題点が指摘されています。
投球動作の各相に必要な関節や筋などのすべての運動機能が正常に近くなれば、投球フォーム上の問題が出てきますが、選手自身が投球に際して行おうとしていた動作と実際に行われていた動作(フォーム)とのギャップも関節機能や運動連鎖の問題を見つける重要な情報となります。

※肩痛の選手の痛みの出現前に指摘された投球フォームの問題点

ワインドアップ期 ・軸足のブレ、足部の回内運動

・後方荷重(前後重心のブレ)

・体幹の非投球側への傾斜

早期コッキング ・ステップ脚を接地したとき(スライド)

・非投球側(リード)の肘の位置

・投球側の肘の高さ

後期コッキング ・非投球側リードの引き込み

・投球側の肘の高さ

加速期~フォロースルー期 ・体幹の前傾、前方回旋不良

・体重移動の不備

・ボールリリースポイントのブレ

 

治療方法を決定する

症状を説明できるような病態や機能の把握ができたのならば、次はその痛みを出さないための治療方法の選択が必要です。
生理的な動きのなかで痛みが誘発されるようであれば、損傷組織に対する治療が必要です。(局所を刺激しないような安静等)
もし生理的な動きの中では痛みは誘発されないが、非生理的な状態をつくることで痛みが誘発されるようであれば、その状況を回避するための運動療法が有効になります。運動機能の問題点を検索し、運動機能を改善させるような運動療法を選択しますが、肩関節(上腕骨頭の関節窩上)の動きが安定せず、どうしても運動軸が確保されないようであれば、手術による関節の安定化が必要となる可能性が高いです。
いずれにしても、目的と効果を明確に判断して運動療法がおこなわなければ当然治療効果は出ないので、痛みの発生に至る全身の運動機能のどこがどの程度低下していて、運動療法でどの程度の時間でどこまで向上できるか見極めるとともに、その選手が現在あるいは近未来にチームの中でどの位置にいて、いつ活躍できないといけないのかなど、社会的因子を配慮することが治療法の選択には大切だと考えます。

成長期の投球障害の要因

成長期の小学生・中学生で投球による肩・肘障害の要因は、成人と同様に

①オーバーユース
②コンディショニング不良
③不良な投球ホーム

であるが、成長期にはそこに成長期特有の体の特性、成長スパートの影響、未熟な投球動作、経験不足の指導者の存在や試合・練習日が土・日に集中するなどの環境要因が加わる。

成長期の体の特性

子供の肘レントゲン

子供の体は単純に大人の体を小さくしただけではなく、成長期特有の解剖学的特性を有していることに配慮する必要がある。弱点としては成長軟骨が存在すること、腱、靭帯付着部にも軟骨が存在しているため弱いこと、成人に比べて骨が未成熟で強度が低いこと、筋力が未発達であることなどがあげられます。
間接的な危険因子として、成長スパート期の男子では体幹・下肢の柔軟性低下があること、同年齢でも体格や成長のスピードにばらつきがあることがあげられます。
特にこの時期の体の大きな選手は急速成長のために下肢・体幹の柔軟性がかなり低下しています。一方で、肉体的・技術的に未熟でも体の大きさから、小さい選手より早い投球ができるため、投手・捕手というストレスの大きいポジションにつくことが多く、そのため、ほかの選手以上に注意が必要です。

オーバーユース

日本はアメリカなどに比べると、練習時間や試合数などは多い傾向です。
試合数の統計を見てみると、小学生軟式野球チームにおいて小学5~6年生の年間の試合数は100試合以上に及びます。
試合も土曜日・日曜日・祝日でこなし、1日に2~3試合行うこともあります。
さらに小中学生においては、積雪地域を除くとオフシーズンがない。体が成熟した高校生以上では冬季には試合はなく投手も投球活動を控えているのに、体が未成熟な小中学生が年中野球活動を行い、寒い冬季でも投手は全力投球をしている。
アメリカなどでは冬季の間は野球から離れてバスケットボールやフットボールなど他のスポーツを行うことで、体の限定した部位へのストレスの集中が避けられ、バランスのよい体づくりができています。

コンディショニング不良

①下肢・体幹のコンディショニング不良

投球障害肩・肘を生じている野球選手の多くに下肢・体幹の柔軟性の低下やコアマッスルの機能不全を認める。
大腿四頭筋、ハムストリングス、背筋、腸腰筋の柔軟性はそれぞれのテスト法で評価されるが、野球選手ではいずれも高率に柔軟性が低下している。
子供の体は柔軟で、運動をしていない大人よりバランスがとれていると思われがちですが、背筋や腸腰筋が硬く腰痛前彎が強い選手や、股関節周囲の筋肉が硬いので正しいスクワットや安定した片脚立ちができない選手が多くいます。
また柔軟性だけでなく体幹から股関節周囲の安定性低下がみられます。
下肢・体幹機能の低下があると下肢・体幹からのエネルギー出力が低下して、運動連鎖的には積み木の土台が崩れてしまうこととなり、全体のパフォーマンスいわゆる球速の低下につながります。
選手は球速を保つために腕を強く振ることで球速を保とうとして結果的に肩や肘のオーバーユースにつながります。

 

②肩甲胸郭関節のコンディショニング不良

投球障害肩の症例では、肩甲骨の固定性や運動性が損なわれていることがしばしば確認されます。広背筋、僧帽筋下部線維、前鋸筋など肩甲骨周囲筋の機能不全や伸張性低下があると、肩甲骨の胸郭上での可動性や安定性が低下し、肩甲上腕関節の水平伸展や水平屈曲などの動きを過剰に使うことになり肩甲上腕関節の障害が起きやすくなってしまいます。
またコッキング後期での肩関節外旋時において、肩甲上腕関節の外転・外旋以外に胸椎の伸展と肩甲骨の上方回旋・後傾が肩の外転・外旋角度の確保に関係しており、胸椎伸展や肩甲骨後傾が減少すると肩甲上腕関節に過剰な外転・外旋ストレスや肘関節外反ストレスが生じてしまいます。
成長期の選手の中にもいわゆる猫背で肩甲骨が下方回旋気味で肩関節挙上が十分にできない選手をよく見かけますので注意が必要です。

 

③肩甲上腕関節のコンディショニング不良

投球動作によって繰り返される肩関節の負担により、野球選手の投球側肩関節可動域には特徴的な変化が生じます。
肩関節の外転90度外旋角度(外転外旋)の増大、外転90度内旋(外転内旋)・外転90度外旋内旋総可動域・屈曲90度内旋(屈曲内旋)・水平屈曲・肩甲上腕関節の減少を起こします。
こうした肩関節可動域の変化は野球を開始して間もない小学生からすでに認められ、同世代のサッカー選手にはみられないことから、野球選手に特異的な現象であることがわかります。
この可動域変化は骨性の変化も要因であるが、軟部組織(筋肉・腱・靭帯)の要素がある程度関与していると考えられます。
少なくても小学生においては軟部組織の要素が可動域減少の主因で、外転外旋の増大は潜在的前方不安定性、外転内旋・屈曲内旋・水平屈曲の減少は後方タイトネスという2つの問題が肩関節局所で生じていることを示し、これらは投球障害肩・肘の病態に密接に関与しています。

 

④回内屈筋群のコンディショニング不良

小学生高学年以降の、特に投手において回内屈筋群(手首を曲げる・ドアノブを左側に回す筋肉)の筋伸張性低下や疲労のし易さを認める選手をよくみかけます。
これは肘関節内側障害の発生因子となります。

 

投球動作

⑤不良な投球フォーム

技術的な不備である不良な投球ホームで投げることでも障害が発生します。
ただ前述したコンディショニング不良が原因で投球フォームが不良になっている場合もあるため、コンディショニングの評価と併せて検討する必要があります。
代表的な不良フォームには

  • コッキング期で肩甲上腕関節の水平伸展ストレスを増強する「体の早い開き」
  • 肩甲上腕関節に最もストレスが加わり後期コッキング期~ボールリリースにおいて※ゼロポジションを逸脱する「肘下がり」
  • ボールリリース前後で肩関節内旋を過剰に使う「内旋投げ」
  • 体幹の回旋動作が不足して肩甲上腕関節を支点とした水平伸展から水平内転運動を過剰に使う「手投げ」

※ゼロポジション→肩甲骨の肩甲棘と上腕骨のが一直線になった位置

これらの問題点は、単一で存在することは少なく複合していることが多いです。
たとえば、「体が早く開く」と投球側の肘を背側に残しておこうとするため、コッキングで過剰に投球側の肘を引き込み、肩の水平伸展を生じ、その結果、投球側の肩の挙上が十分できなくなり「肘下がり」を招きます。
肘下がりでは肩甲骨上方回旋が不足し肩のしなりを使えず、「内旋投げ」で投球してしまいます。
ただし、こうした上肢のポジショニング不良の基盤には上肢の使い方以外に股関節・体幹の使い方の問題が潜んでいることが多くあります。
また、肩より末梢である手関節や手指の使い方の関係も報告されていますし、当院でもここまでアプローチしていきます。
手関節の背屈・掌屈を使った投げ方、ボールを親指の指腹で握ることが「肘下がり」や「内旋投げ」を誘発するといわれています。

一般的な成長期の投球による肩・肘障害の保存療法

成長期の投球による肩・肘障害の多くは保存療法で対処可能です。
まずは問診により、野球歴やポジション、投球数や練習時間を聞きます。
その時にオーバーユースの要素があった場合は、推奨される投手の投球数や練習時間を指導する。
病院(整形外科)レベルでは、一定期間のノースローにより筋疲労を除去し、必要に応じて非ステロイド性抗炎症薬の投与、注射療法、物理療法により局所の炎症を軽減させます。
そして下肢・体幹のエネルギーを十分利用し、そのエネルギーを上肢に効率よく伝え、連結部にあたる肩関節に過度の負荷をかけないようにするために、理学療法として全身のリコンディショニングと投球ホームの矯正を行います。
特に股関節と肩甲骨の動きの改善が重要です。
ただし小・中学生が理解できる指導を行い、極力学校生活に支障がないようにホームエクササイズを基本としています。

オーバーユースの改善

肩・肘関節を含めてまだ筋・骨格が未成熟な成長期の野球選手において、投手の試合での全力投球数や全体練習時間にある程度の制限を設け、寒い冬季には試合を控え他のスポーツを行うことが必要です。

 

◎1995年アメリカにおいて推奨されたガイドライン

推奨される最多投球数

年齢(歳) 最多投球数/試合 最多試合数/週
8~10 50球 2試合
11~12 65球 2試合
13~14 75球 2試合
15~16 90球 2試合
17~18 105球 2試合

 

◎日本で1995年臨床スポーツ医学会で推奨されたガイドライン

青少年の野球障害に対する提言

練習日数・時間 小学生 2時間/日、3日/週以内
中学生・高校生 1日/週以上の休養日
全力投球数 小学生 50球/日、200球/週以内
中学生 70球/日、350球/週以内
高校生  70球/日、350球/週以内

野球肘(11~12歳に発生のピーク)
野球肩(15~16歳に発生のピーク)
・試合の翌日はノースロー
・投げ込みの翌日は投球数を減らす
・1日2試合の登板は禁止

これらの投球制限を裏づける有意な変化を検出できてはいませんが、投球による肩・肘障害の発生状況を踏まえると投球数の上限規定は日米でほぼ同様であり、妥当性が高いと思われます。
しかし、日本の少年野球の現場においてはほとんど守られていないのが現状です。
エリート選手の養成にはある程度の練習量は必要という意見もありますが、能力の高い選手ほど、投手に抜擢され試合出場機会も増えるため、障害発生の危険性が高いといえます。
少なくとも小中学生のうちに有望な選手が肩・肘関節を壊して、その後の野球活動に支障をきたす事態は回避すべきことだと思います。

下肢・体幹のストレッチと機能訓練

下肢・体幹のストレッチを実施している選手は多いが、有効なストレッチができていることは少なく、正しいストレッチ方法の指導が必要です。
一方、下肢・体幹の柔軟性には問題ないにもかかわらず、下肢・体幹の機能が十分使えていない選手もいます。
そうした場合は、いわゆるコアな筋肉や股関節周囲の機能不全がかかわっているとされています。正しいスクワット訓練や腹・背筋を含めたコアマッスル・股関節周囲筋の機能訓練により下肢・体幹の機能を十分に活用することが可能になります。

肩甲胸郭関節の周囲筋機能訓練

投球動作中に肩甲上腕関節への過度なストレスをかけないためには、ステップ脚が地面に着地した時に十分に肩甲骨が内転し、コッキング後期からボールリリース時に十分な上方回旋する必要があります。
肩甲骨がその滑走路に当たる胸郭の上をスムーズにかつ十分に働くために、胸椎や胸郭のストレッチングを行い、肩甲骨の上方回旋を妨げる、小胸筋、上腕二頭短頭、烏口腕筋などの筋緊張を緩和させる必要があります。
肩甲骨を胸郭上で動かし安定させる肩甲骨周囲筋である僧帽筋、前鋸筋、菱形筋などの機能訓練も必要です。

肩甲上腕関節のストレッチと腱板筋機能訓練

肩後方軟部組織のタイトネスに対しては、後方の筋肉を伸長させるセルフストレッチを推奨していますが、リハビリ分野では※CKC(Closed Kinetic Chain)手技を取り入れています。
※CKC(目的とした筋肉をアプローチすることで運動連鎖を修正する)
パートナーストレッチも有用性が高いものの、通院が必要になるため比較的簡単なストレッチ方法が提案されています。
また腱板のトレーニングは、肩甲骨運動がみられない範囲の強度を確認し、その強度の範囲内で実施するように無負荷またはチューブ訓練を指導しています。

回内屈筋群のストレッチと筋力訓練

回内屈筋群のストレッチとチューブ訓練による筋力強化を行う

  • 回内屈筋群ストレッチ
  • 回内屈筋群ストレッチ
  • 回内屈筋群チューブ筋力訓練

投球ホームのチェックおよび矯正

投球ホームに問題がなくコンディショニング不良が原因で投球フォームを崩していた選手は、リコンディショニングで投球ホームも自然に改善するが、多くの選手は投球ホーム自体に問題を抱えている。投球フォームに問題がある選手は、いくらリコンディショニングにより体の柔軟性や筋力を回復させたとしても、不良なフォームで投げることにより肩・肘関節にオーバーストレスを加えてしまい、いずれ症状は再発する。そこで投球フォームへのアプローチも必要となります。
投球動作は短時間の高速運動であるため、内眼的なチェックには限界があります。
当院では患者さんとラインで動画のやり取りをしたり、実際に家庭用ビデオやスマートフォンで投球動作を撮影してもらい来院時にチェックを行っています。

 

・コッキング初期

このときの「軸脚の股関節を入れる」という軸脚股関節の使い方が最初のキーポイントとなります。軸脚の股関節と膝関節を同程度に屈曲して両側の内転筋を緊張させながらステップ脚股関節の適度な内旋も入れることがコツです。この股関節が入ると体幹の後傾がなくなり上肢のポジショニングも安定し、重心移動も十分使えるようになります。

 

・フットプラント(ステップ脚が地面に着地した時)

このときのいわゆるトップポジションは、その後の投球フォームに大きな影響を及ぼすこと、本人が動作の意識をしやすいタイミングであることから重要な意味を持ちます。軸脚膝を十分に伸ばして重心移動しステップ脚股関節で踏みとどまること、グローブ側の肩関節の内旋により「体の開き」を抑制すること、投球側の適度な肩関節の外転・内旋と適度な肘の屈曲による「上肢が横S字を形成するトップポジション」をつくることなどが重要になります。

 

・加速期~ボールリリース~フォロースルー期

ステップ脚の股関節を軸として体幹の前方回旋運動を十分に行い。そのエネルギーにより「腕が振られる」運動を誘導します。
観察された問題点に対するアプローチとしては、まずその後の投球動作に影響を及ぼすワインドアップ時の姿勢不良を矯正します。次に重心移動、体幹回旋、そして上肢の使い方という順番に指導します。投球動作の運動要素における姿勢や肢位、および体の使い方を学習するために各期における運動別にシャドーピッチングによる動作トレーニングを行い、一連の投球動作につなげていくように勧めます。

 

投球フォームチェックシート(※参考)

ワインドアップ期 早期コッキング期 加速期 フォロースルー期
姿勢

四肢

体幹の相対的位置

上肢 ・ボールと頭部の距離

・投球側の肘の位置

・グローブの位置

・投球側の肘の位置

・グローブの位置

・投球側の手の位置
体幹 体幹の傾斜 体幹の傾斜 ・骨盤の回旋

・体幹の回旋

・体幹の回旋

・体幹の前傾

下肢 軸足の方向、ステップ脚の挙上 ステップの方向 ステップ脚の膝の方向 ステップ脚の膝の方向

 

最後に・・・

いかかでしたか?
ご自身の肩の痛みや体について理解できましたでしょうか?

理解できたけどまだまだ不安なことや分からないことだらけだと思う方もいらっしゃるかと思います。

そこで当院では、LINE@にて投球障害(野球肩・野球肘)についての無料相談を行っています。
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